テナント物件を貸す場合、だいたい利用方法に条件が付いていることがほとんどです。
一番アウトにされがちなのが重飲食。焼肉や中華ですね。
火と煙、臭いのリスクを避けたい物件だからです。
こういった条件をクリアしていたとしても、貸主オーナーからすると「望まれない借主」は存在します。
家賃をちゃんと払わない借主は論外として、利用方法が荒っぽくて他の入居者や近隣建物に迷惑をかけるような借主は絶対に避けたいところです。
しかし入社試験みたいにテナント借主を面接することは普通ありません。
入居審査というか仲介不動産屋さんから伝えられた情報を元に貸すか貸さないか物件オーナーが決めます。
どう考えてもO.K.されるだろう、という借主の思いに反してNGが出るのは珍しくありません。
こういう場合、利用方法以外に借主情報の何かで「望まれない借主」である匂い、可能性を感じてNGを出したり、過去に困った借主と同一条件が当てはまると自動的にNGになったりします。
売る場合と違い貸す場合はずっと貸主としての責任が残るため、どうしても気になってしますと貸せなくなります。
じゃあ家賃を上げたら借主のいわゆる質が上がるか?というとそうとも限らず、単純に問い合わせが減って空き部屋になるだけでしょう。
どうすれば物件オーナーが安心して貸せる借主に興味を持ってもらうか?
これは借主側の利用イメージを提供することで可能性を高めることができます。
一般的に不動産のテナント募集は、
- 家賃
- 立地
- 物件状態
- 禁止利用目的の有無
- 写真
などの情報を不動産屋さんや不動産情報サイトから手に入れて検討します。
だいたいは立地と家賃から入り、その後写真やその他条件を加味して判断。実際に現場を見て決定するルートでしょう。
つまり立地と家賃で検討してくれる人を呼び込んでいるわけで、物件自体に興味を持って問い合わせしてくれる人というのはこの時点では少ない。
極端なことを言うと物件に惚れ込んで借りに来てくれる人じゃない可能性が高いと言えます。
立地と家賃だけで入居したテナントより、この物件だからやりたいことができる!ここでやりたい!というテナントの方が「ちゃんとした」利用法をされる可能性が非常に高まります。
なぜならその物件に惚れ込んでいるのだから、自らその環境を評判を下げるような行動はしないからです。
となると、物件オーナーがやるべきことというのは……
- 家賃、立地を一番のアピールにしない
- 物件情報を詳しく掲載する
- 利用イメージを提供する
ということが考えられます。
家賃、立地を一番先にアピールするのが不動産情報の基本ですが、ここで「これはダメだ」と切られることが多い。
でも物件を詳しく知った後なら「まあでもいいかもしれない……」と検討余地が残る可能性があります。
「本当は◯◯駅周辺で検討していたけど、△△駅周辺のこの物件でもいいかもしれないな」
という発想の転換を起こしてもらえるかもしれない。
男女の出会いと似ているかもしれません。
年収や職業、見た目だけだとアウトだったけど、先に人となりを見ていたら年収とかは妥協できたりあまり気にならなくなったり。
不動産も似たようなものです。
物件に惚れてもらうためには、やはり情報をしっかりと掲載する必要があります。
詳しく載せる理由は、実際に借りた後のイメージを想像してもらうためです。想像するための材料。
写真だったり文章情報だったり。
不動産屋さんや不動産情報サイトで手に入る情報より多く、かつ角度を変えた情報掲載で物件をより知ってもらう必要があります。
不動産情報サイトでは、「飲食、美容室、各種教室、クリニック……」などこんな利用ができるよ!という情報が書いてありますよね?
また過去は居酒屋だったとか、歯医者さんだったとか、過去の利用履歴情報もあったり。
わずかな情報ですが、この単語一つで「この物件を利用したイメージ」が湧きやすくなります。
こういった情報をもっと具体的に、かつオーナーとして好ましい利用形態を掲載することで利用イメージを促進させます。
最初に利用イメージを提供することで、そのイメージの利用方法ではない人は検討から外れやすくなります。
その分、興味を持ってくれる人は減ります。つまり成約率は下がります。
ただオーナー側が理想とする利用形態で検討している人のの問い合わせ率は上がります。
極端な例ですが、スーパーの食品でも同じ事が起きます。
カレーにおすすめ!とアピールされている牛肉は、実際焼いて食べてもいいわけですが、カレーに使える肉を探していた人が手に取りやすくなり、焼いて食べる肉を探していた人は手に取りづらくなります。
人は初めに「レッテル」を貼られるとそのイメージに引っ張られやすくなります。
必ずしもそうじゃありませんが、不動産はほとんどの場合は立地と一枚目の物件写真、家賃でイメージが引っ張られがちです。ここを解消する、または緩和することで物件に惚れ込んで利用してくれる、オーナー側が安心して貸せる店子さんが見つかりやすくなります。
ただ繰り返しますが、問い合わせ数や成約率はどうしても落ちるのは仕方がないことです。